「ネット断食」で休日穏やか…疲れ、ストレス軽減に

広がるSNS疲れ 電源切り読書や散歩

(2013年8月17日 読売新聞)

 一定の間、インターネット環境から遠ざかる「ネット断食」が注目されている。

スマートフォン(スマホ)やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及につれ、ネットに接続しないと落ち着かない「ネット依存」が問題となり、意識的にネットと距離を置く時間を作ることが重要視され始めた。

東京都の会社員男性(45)は昨年11月に休暇を取り、5泊6日で伊勢志摩方面を旅した。旅行中はネットと一切つながらず、スマホの電源も切ったまま。空いた時間は愛読書を読み直すなどに使った。

仕事中はパソコンでメール、プライベートもスマホでSNSと、公私ともにネット漬けの毎日。「ネットから離れられず、息の抜けない生活に疲れを感じた」という。「旅行では、ここ数年経験したことのない、のんびりした時間を過ごせた」と満足そうだ。

こうしたネット断食は米国などで数年前から広がり始め、最近日本にも波及してきた。体内の有害物質を排出する「デトックス」にちなみ、「デジタル・デトックス」とも呼ばれる。

ネット関連会社、アライドアーキテクツ(東京)の高梨浩司さん(32)も、昨年から、週末はほぼネット断食状態。後輩社員とよく首都圏の海に出かける。7月下旬には神奈川県横須賀市の無人島で、サーフボードに立ってオールをこいで進む「スタンドアップパドルボード」を楽しんだ。

仕事柄、平日はネットから離れづらい。「その分、休日は自然の中で過ごすようにしています」。異なる環境に身を置くことで新しいアイデアが思い浮かぶなど、仕事にも好影響を与えているという。

子育てを機に、ネット断食を始める人も。同県鎌倉市の会社員、大久保柳華りゅうかさん(29)は、長男の育児休業から復職した昨年以降、休日はパソコンを開かない。長男と近所を散歩する時はスマホを持っていかないことも。「子どもとスキンシップが多くとれ、良い気分転換になっています」

ネット断食が叫ばれる背景には、SNSの普及がある。SNSは交流を広げやすい反面、時間を問わず他人との接触が続く。互いの顔が見えないための気疲れもあり、ストレスがたまりがちになる。

調査会社のネオマーケティング(東京)が昨年行った調査では、20代の約4割、30代の約3割が「SNSを休む時間が欲しい」と思っており、若い世代を中心に「SNS疲れ」が広がりつつある。

疲れやストレスの軽減には、ネットと離れる時間を作ることが大事なようだ。

週末1日だけでも

ネット断食はどうすればよいか。「銀座泰明クリニック」(東京)を開業する精神科医の茅野分ちのぶんさんは、「短時間だと効果は期待できない。少なくとも丸1日はネットから離れて」とアドバイスする。

例えば、金曜晩に帰宅後、月曜朝に出社するまで断食する。難しければ1日だけでもよい。「夏休みなどまとまった休みを活用するのも効果的」と茅野さん。期間中は、自然豊かな場所やリゾート地などで過ごすとリフレッシュでき、ネットにつながらない不安を感じにくいという。

断食中は、友人や職場の同僚からメールが来ることも。事前にネットから離れることを伝え、緊急時以外は連絡を控えるよう頼んでおこう。

 

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