慢性疲労症候群の痛み抑制に手がかり

2014-05-27_141109 慢性疲労症候群で見られる異常な痛みの原因の一部は脊髄内の免疫細胞、ミクログリアの活性化である可能性を、名古屋大学大学院医学系研究科の木山博資(きやま ひろし)教授と安井正佐也(やすい まさや)技術職員、九州大学大学院薬学研究院の井上和秀(いのうえ かずひで)教授らがラットの動物で明らかにしました。5月23日付の米科学誌グリアのオンライン版で発表しました。

慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)は過度の疲労感や睡眠障害、痛みなどのさまざまな症状を伴いますが、原因はよくわかっていません。研究グループは、5日間ストレスを加えて慢性疲労症候群の症状を呈するようにしたラットで解析しました。このラットは触覚を異常な痛みと感じ、さらに筋肉痛などがありますが、皮膚や筋肉など末梢には炎症や損傷はなく、血液中の炎症マーカーの上昇なども見られません。これらは慢性疲労症候群の患者の症状と似ています。

このラットの脳や脊髄を調べると、脊髄の後角(背側)と呼ばれる部分に、活性化したミクログリアが増殖し、集まっていました。ミクログリアの活性化を抑える薬剤のミノサイクリンを脊髄内に投与すると、ラットの異常な痛みは抑制されました。これにより、慢性疲労症候群などの機能性身体症候群で見られる原因不明の異常な痛みの原因のひとつが、脊髄内のミクログリアの活性化と増殖にあることが示されたのです。

木山博資教授は「慢性疲労症候群はいろいろなストレスが原因になっており、症状も多彩で、一筋縄ではいかないが、この研究で痛みの原因は絞り込めた。今後は脊髄内にミクログリアが増殖活性化する仕組みを解析したい。患者の診断に、脊髄のミクログリアの検査が使えるのではないか。痛みを和らげる治療の標的としてミクログリアの活動抑制が役立つことも予想される」と話しています。

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(左写真)慢性疲労症候群のモデルラットの脊髄後角に見られるミクログリアの活性化と集積(A. 矢印の緑の細胞群)、ミクログリアの集積が見られない正常なラットの脊髄(B)

(提供:木山博資名古屋大学教授)

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